AI翻訳の全盛の時代に問われる翻訳会社の役割とは
AI翻訳の精度が飛躍的に向上した今、
翻訳品質を左右する要因は、英語力そのものではなくなりました。
重要なのは、原文となる日本語に
どれだけ曖昧さを残さず、意図を整理できているかです。
主語や判断が不明確な日本語は、
AI翻訳でも人手翻訳でも、解釈のブレを完全には防げません。
私たちはAI翻訳を積極的に活用しつつ、
機械翻訳後に英語として違和感のある表現については、
翻訳依頼元のご担当者様と相談しながら、
翻訳しやすい日本語への修正について助言を行います。
そのプロセスを通じて、
誤解の少ない英語翻訳を目指します。
翻訳方針(Translation Policy)
― 言葉ではなく、意図を翻訳する ―
当社は、翻訳を
単に日本語を英語に置き換える作業とは考えていません。
翻訳とは、
日本語で整理された意図を、
別の言語でも同じ意味として伝わる形に整えること
だと考えています。
AI翻訳の精度が向上した現在、
英語表現そのものは、機械でも高い水準で生成できます。
一方で、翻訳結果の品質を左右するのは、
原文となる日本語に曖昧さが残っているかどうかです。
当社ではAI翻訳を積極的に活用しつつ、
英語として違和感が生じやすい箇所については、
翻訳依頼元のご担当者様と相談しながら、
翻訳しやすい日本語表現への修正について助言を行います。
翻訳の最終判断は依頼元にあります。
当社は、専門的な視点から
誤解が生じにくい形を一緒に検討する立場を担います。
AI翻訳との向き合い方
①「95%翻訳」の時代における 残り5%の正体
まず重要なのは、この 5%は「誤訳の量」ではなく「意味のズレが起こる領域」だという点です。
この5%に含まれるもの
企業翻訳において、AIが取りこぼしやすいのは次の領域です。
- 責任・リスク・義務に関わる表現
- shall / may / should
- best efforts / reasonable efforts
- to the extent permitted by law
- shall / may / should
- 暗黙知・文脈依存語
- 日本語の「対応する」「検討する」「善処する」
- 主語が省略された責任主体
- 日本語の「対応する」「検討する」「善処する」
- 企業固有・業界固有語
- 社内略語、開発コード名、工程名
- 日本独自の商慣行用語(例:検収、内示、元請)
- 社内略語、開発コード名、工程名
- 数値・条件の境界
- 「含む/含まない」
- 「原則として」「例外的に」
- 「含む/含まない」
② 企業にとってこの5%は「リスクファクター」か?
結論から言うと
はい。しかも「静かなリスク」です。
なぜ危険なのか
AI翻訳の怖さは、
「それらしく正しく見える」誤り
を生む点にあります。
具体的なリスク構造
| 分野 | 5%が引き起こす問題 |
| 契約 | 義務の範囲拡大、責任転嫁 |
| 技術 | 仕様誤認、性能保証の誤解 |
| IR | 誤った期待値形成 |
| M&A | 表明保証の意味ズレ |
| 品質 | クレーム時の解釈差 |
📌 経済学的に言えば
この5%は
「低頻度・高インパクトリスク(Tail Risk)」
に該当します。
③ なぜAIはこの5%を苦手とするのか(言語学的視点)
AIは 「統計的に多い正解」 には強いですが、
企業翻訳で重要なのは 「唯一の正解」 です。
言語学的に言うと
- AIは 言語(language) は扱える
- しかし 言語行為(speech act) は弱い
例:
“We will consider the proposal.”
- 表面意味:検討する
- 実際の行為:拒否の前段/時間稼ぎ/条件付き承諾
この「行為の意味」は、
組織文化・交渉力・立場関係を知らないと訳せません。
④ 将来3%になっても「企業翻訳」が人を必要とする理由
仮に精度が97%になっても、
企業にとって重要なのは「残り3%がどこか」です。
企業翻訳でAIが最後まで苦手な領域
- 新規技術(まだネットに無い)
- 社内造語(プロジェクト名・装置名)
- 法的に未確定な概念
- 日本特有の「責任をぼかす表現」
➡ これらは 検索不可能
➡ 学習データにも存在しない
⑤ 社内専門用語・業界用語への現実的対応策
① 「翻訳」ではなく「定義」を先に作る
企業がすべきことは、
訳す前に、言葉を定義する
実務的には
- 社内用語集(JP/EN)
- 「この言葉は英語ではこう説明する」という 説明翻訳
例:
- ❌ Kenshu
- ⭕ Formal acceptance inspection conducted by the client
② AI+人間の役割分担を明確化
| 領域 | 担当 |
| 文章構造 | AI |
| 一般語彙 | AI |
| 専門用語 | 人 |
| 責任表現 | 人 |
| 契約・技術判断 | 人 |
📌 「AIで95%作り、人が5%を設計する」
これが最もコスト効率が高い。
③ 「訳語固定」ではなく「意味固定」
重要なのは単語ではなく 解釈の固定 です。
- 単語は変わってもよい
- 意味はブレてはいけない
そのために:
- 契約定義条項
- 技術仕様の用語定義章
- 用語+使用例セット
AI翻訳は、すでに実務で十分に活用できる段階にあります。
当社では、AI翻訳を
効率と品質を両立するための前提技術として位置づけています。
AI翻訳が得意な領域
- 定型的なビジネス文書
- 一般的な技術用語
- 法律・契約の基本構文
- 過去事例が多い表現
注意が必要な領域
- 主語や責任の所在が省略された日本語
- 社内独自の用語や略語
- カタカナ英語
- 読み手によって解釈が変わる表現
これらは、AI翻訳でも人手翻訳でも、
日本語原文の曖昧さがそのまま反映されやすい部分です。
翻訳の進め方(ワークフロー)
翻訳は、以下の流れで進めます。
- 日本語原稿の受領
完成原稿でなくても問題ありません。 - AI翻訳の実施
全体像を把握します。 - 英語表現の確認
英語として違和感のある箇所を確認します。 - 日本語表現についての相談・助言
翻訳しやすい日本語への整理案を提示します。 - 修正内容を反映した翻訳
ご判断いただいた内容を反映します。
※ 日本語修正の実施可否および最終判断は、依頼元にあります。
よくある課題と対応例
日本語が長く、英語にしづらい
→ 問題は長さではなく、
一文に複数の意図が含まれている点にあることが多くあります。
社内用語や業界用語・専門用語がそのまま英語にできない
→ 直訳ではなく、可能な限りAIを活用して調査を行い、
英語として通じやすい表現の選択肢を提示します。
カタカナ英語が通じない
→ 誤解の可能性を説明し、代替表現を検討します。
当社は正解を一方的に決めることはしません。
選択肢とリスクを示し、判断材料を提供します。
専門用語・社内用語の扱いについて
なぜ専門用語は、そのまま英語にできないのか
専門用語は、業務・制度・文脈に強く依存するため、
直訳が誤解を生む場合があります。
当社の基本的な考え方
専門用語は
「正しく訳す言葉」ではなく「意味を整理して伝える概念」
として扱います。
AIを活用した用語調査について
専門用語や業界用語の調査には、
内容や分野によって大きな工数差が生じる場合があります。
そのため当社では、
対応可能な分野や専門性のレベルを事前に確認したうえで、
対応可否や進め方をご相談させていただいています。
対応可能と判断した分野については、
可能な範囲でAIを活用しながら調査を行います。
具体的には、
- 公開されている特許文献や技術文書での使用例
- 海外企業や業界団体で用いられている表現
- 類似概念における英語での言い回し
などを参照し、
英語として通じやすい表現の候補を整理します。
ただし、こうした調査は
分野によっては膨大な時間を要する場合があり、
すべての専門領域に一律に対応できるものではありません。
そのため当社では、
対応可能な範囲を見極めたうえで、
専門性の高い文章についても、可能な限り対応する努力を行う
というスタンスを取っています。
なお、AIが提示する表現は
あくまで候補の一つであり、
そのまま採用すべき正解ではありません。
最終的には、
文脈や用途を踏まえたうえで、
翻訳依頼元のご担当者様と相談しながら表現を選定します。
お問い合わせ
翻訳にあたって、
日本語原稿が完全に整理されていなくても問題ありません。
現在の状況を伺いながら、
翻訳しやすい形について一緒に検討します。
まずはお気軽にご相談ください。
